新刊

自民党改憲案にどう向きあうか

自民党改憲案にどう向きあうか

いま知りたい改憲問題のガイドブック

著者 清末 愛砂 編著
石川 裕一郎 編著
飯島 滋明 編著
池田 賢太 編著
ジャンル 社会問題
シリーズ GENJINブックレット
出版年月日 2018/05/20
ISBN 9784877987039
判型・ページ数 A5・80ページ
定価 本体1,000円+税
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

自民党は精力的に改憲論議をすすめ、このほど「改憲条文素案」をまとめた。今後、①自衛隊明記、②教育環境整備、③参議院合区解消、④緊急事態の4本柱を「憲法改正原案」にしていく作業を行う。素案の各条項の狙いを徹底的に分析し、この改憲が日本の将来にとって本当に意味あるものかを考える。

※この商品の小社サイトからのご注文には、送料300円と代引き手数料230円がかかります。


◎はじめに

2018年3月10日、日本の観光名所でもある「東京スカイツリー」は特別の白い光でライトアップされました。1945年3月10日の東京大空襲では、2時間の空襲で10万人もの犠牲者が出ました。3月10日のライトアップは東京大空襲の犠牲者の追悼のための、特別のライトアップです。

東京スカイツリーでは9月1日にも同様なライトアップがされます。そのライトアップは関東大震災の犠牲者の追悼のためです。関東大震災では緊急事態条項と法的には同じような「行政戒厳」が発令されました。「行政戒厳」を根拠に、軍隊は朝鮮人や中国人を虐殺しました。関東大震災では「自警団」などによる虐殺とあわせて朝鮮人6000人以上、中国人700人以上が虐殺されました。

このように、過去の悲惨な出来事を風化させずに記憶にとどめ、二度と同じような悲劇を起こさないという営みはいたるところで行われています。そうした営みの最たるものが、「国の基本法」であり「最高法規」である「憲法」です。

かつての日本の権力者や軍が起こした「戦争」は一般民衆に未曾有(「みぞう」と読みます)の犠牲をもたらしたことから、日本国憲法では戦争や武力行使などを認めない、徹底した「平和主義」が採用されています。また、関東大震災の際の「行政戒厳」のような、緊急事態権限を権力者に認めたことが「個人の権利・自由」を踏みにじったという歴史的事実から、日本国憲法では緊急事態条項(国家緊急権)は明記されませんでした。

このように、「過去幾多の試練」(憲法97条)への反省、再び同じ過ちを繰り返さないという「営み」として、日本国憲法ではさまざま原理や規定が設けられています。

ところが安倍自民党は①自衛隊の憲法明記、②緊急事態条項の導入、③教育環境の整備、④参議院の合区解消という4項目を中心とする改憲作業を続けています。2018年3月25日に開催された自民党の党大会に先立ち、自民党憲法改正推進本部は改憲4項目の条文素案を作成しました。3月25日の党大会では2018年度運動方針の筆頭に改憲方針が示されました。2018年秋以降には改憲の国民投票が実施される可能性があります。こうした政治状況を見据え、自民党改憲条文素案やその方向性が有する問題を社会に提起するのが法の専門家としての社会的役割と考えて刊行したのが本書です。

まず最初に、沖縄だけではなく、日本の基地反対運動の象徴的存在である山城博治さんへのインタビューを掲載しています。安倍自民党が改憲の中でもっとも重視しているのが憲法9条です。そのため、米軍基地や自衛隊基地が集中し、改憲の影響が明確な形で現れる沖縄の現状とその展望を直視することは、改憲問題を考えるにあたっては必須と思われます。

次に本書第1部では、憲法の意味や原理、憲法改正の限界について解説しました。こうした項目を設けた理由は、執筆者が改憲問題に関する講演などの際にたびたび「先に憲法とは何かを簡単に説明してほしい」と要望されてきたためです。

第2部と第3部では、憲法改正が私たちの社会や日常生活にどのような影響を与えるかに着目しながら、多角的な観点から自民党改憲条文素案の問題点を説明しました。特に第2部は、現在の改憲問題で大きな焦点となっている自衛隊の憲法明記問題に特化しています。第4部では、国民投票や国民投票法(改憲手続法)の問題点を取り上げました。国民投票そのものの問題や国民投票法が主権者である国民の意思が適切に反映されるしくみになっているのかといった問題を紹介しています。 

第5部では、「実際の影響」という視点からさらに改憲問題を掘り下げ、今後の対応策を提示しました。沖縄のように米軍や自衛隊が集中しているため、やはり改憲の影響を受ける北海道の状況とその展望を直視することも、改憲の是非を判断するのには必要と思われます。そもそも憲法を変えれば、その影響は沖縄や北海道の市民だけではなく、日本のすべての市民にも及びます。改憲問題を考えるに際しては、改憲後の状況を視野に入れる必要があります。そうした影響を見すえた上で、今後、私たちはどう対応すべきかを提示しました。

憲法改正は私たちの世代だけではなく、子どもや孫の世代など、将来の世代にも大きな影響を及ぼします。将来の世代のためにも、憲法改正国民投票で意見を表明することになる私たち一人ひとりには、憲法改正に関する適切な知識を持ち、対応することが求められます。

以前に私たちは同じような問題意識から、『ピンポイントでわかる 自衛隊の明文改憲の論点』を刊行しました。この本とともに、本書が改憲問題に関する理解を深めるための一助になることを願って止みません。

 

2018年3月29日

世界中での武力行使を可能にする

「安保法制」施行2年目の日に

飯島滋明


◎おわりに

本書は、2017年12月に発行した『ピンポイントでわかる 自衛隊明文改憲の論点─だまされるな!怪しい明文改憲』(GENJINブックレット66)に続く2冊目のブックレットです。

現在、国会周辺を含む全国各地では、森友学園をめぐる公文書の改ざんや陸自日報隠ぺいなどに対する抗議行動が展開されており、多数の市民がその全貌を明らかにすることを強く求めています。また、国会でもこれらの問題の究明のために野党が結集し、政権に揺さぶりをかけています。

これらの動きを見ていると、自民党が2017年5月以降に急速な勢いで進めてきた改憲の進み方が弱まったかのような印象を受けます。しかし、そんなことはまったくありません。自民党は野党の追及や市民の声にはいっさい耳を傾けることなく、改憲に向けて動いています。そうであるからこそ、2018年3月25日に開かれた自民党の党大会で2018年度運動方針の第1項目として改憲が示されたのです。

本書を読まれて、皆さまはどのような感想を持たれたでしょうか。疑問に思っていたことがクリアーになった、改憲問題にがぜん関心がわいた、関連する本をもっと読んでみたいなど、さまざまな感想を持たれたと思います。執筆者全員が本書を通してできるだけ多くの方々に伝えたかったことは、私たちだけでなく、次世代以降の人々の基本的人権を大きく侵害しかねない改憲構想がいま、現実に進んでいるという点です。失うことは簡単です。しかし、一度失うとそれを取り戻すためにはたいへんな時間と労力が必要です。いまならまだ遅くありません。一人ひとりが主体的に目の前にある改憲問題に向き合うことが求められています。

本書は自民党の党大会を受けての緊急出版ということで、極めて短時間で原稿を書きあげる必要がありました。そのために、本文では詳しく検討することができなかった課題があります。それは、この憲法がいったい誰をまもってきたのか、言い換えると誰がまもられてこなかったのかという点です。少しこの点を補足しておきたいと思います。

憲法は「わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保」すると書いています(前文一段)。全土というからには北海道から沖縄までのすべての地を指します。また国民か否かについても言及されていないことからわかるように、この社会に住むすべての者が「自由のもたらす恵沢」を受ける対象となるはずです。

残念なことに、現実はそうなっていません。例えば、沖縄では住民の反対の声を無視し、新基地建設が強行されています。また、日本の各地で運営されている朝鮮学校は、高校無償化政策のなかでその適用外とされています。新基地建設反対運動への反発や北朝鮮脅威論の高まりにより、社会では沖縄住民や在日コリアンに対するヘイトスピーチがあふれています。この憲法の下で、これらの人々を含む一部の人々が露骨なまでに人権をないがしろにされ、極めて危険な状態に置かれているということです。こうした状態が続く限り、「全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保」することはできません。

また、安倍首相は政権に反対する人々のことを「こんな人たち」と愚弄する発言をしたことがあります。これは、権力者にとって好ましくない者を排除することを意図する発言です。つまり、この社会では権力者の思惑に応じて、誰もが 〈こんな人たち〉(=マイノリティ)にされる可能性が常にあることを意味しています。基本的人権の尊重を謳う憲法がある国で、こうした状況が起きていること自体が異常事態です。この社会の喫緊の課題として、指摘しておきたいと思います。

最後になりましたが、ブックレット第一弾に続き本書の出版と編集作業を快くお引き受けくださった現代人文社の成澤壽信さん、至急のお願いであるにもかかわらず絵を描いてくださった画家の千光一さん、たいへんお忙しいにもかかわらずインタビューに応じてくださった山城博治さん、山城さんとの仲介の労をとってくださった北海道平和運動フォーラム共同代表の長田秀樹さん、および前回に続きご助言をくださった北海道新聞記者の森貴子さんと荒谷健一郎さんに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 

2018年4月12日 

編者を代表して 清末愛砂

はじめに
インタビュー 山城博治氏に聞く
戦争をしない、軍隊を持たないという憲法9条は世界の宝

第1部 そもそも憲法とは?
 1 そもそも憲法ってなんですか?………池田賢太
 2 憲法は好きなように変えられるのですか?………岩本一郎
 3「基本的人権」ってなんですか? ………石川裕一郎
 4 国民に主権があるってどういうことですか? ………岩本一郎
 5 憲法の平和主義の理念はどのようなものですか? ………飯島滋明

第2部 自衛隊の憲法明記で何が変わるか
 1 改憲条文素案のなにが問題ですか?………池田賢太
 2 自衛隊の憲法明記は私たちの生活にどのような影響をあたえますか?………清末愛砂
 3「自衛」「国防」のなにが問題ですか?………清末愛砂
 4 改憲論の中でよくいわれる「中国脅威論」とはなんですか?………渡邊弘
 5 北朝鮮脅威論とはなんですか?………清末愛砂
 6 自衛隊の憲法明記は東アジアの平和にどのような影響をあたえますか?………清末愛砂

第3部 その他の改憲で何が変わるか
 1 教育環境整備条項………渡邊弘
 2 参院合区解消条項………石川裕一郎
 3 緊急事態条項………榎澤幸広

コラム1 森友問題よりも国会で優先すべき課題があると思うのですが…
コラム2 24条改憲の外堀を埋める動き―家庭教育支援法案について

第4部 憲法改正国民投票ってなんだ
 1 憲法改正の手続はどうなっていますか? ………飯島滋明
 2 国民投票は良い制度ではないですか?………飯島滋明
 3 国民投票法(改憲手続法)にはどのような問題がありますか?………飯島滋明
 4 国民投票運動の規制にはどんな問題がありますか? ………岩本一郎
 5 「最低投票率」「法定得票率」にはどのような問題がありますか?………飯島滋明
 6 国民投票は誰ができるのですか? ………飯島滋明

第5部 改憲は自分に関係ないと思っているあなたへ
 1 改憲の動きに対してどのように対応すべきでしょうか?………飯島滋明
 2 改憲は「北海道」にどのような影響をもたらすでしょうか?………池田賢太
 3 それでも関係ないと思っているあなたへ………渡邊弘

年表/改憲をめぐる動き
おわりに

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