決定!第14回季刊刑事弁護新人賞


最優秀賞 伊藤 建
(富山県弁護士会・66期)  賞金10万円

優秀賞   白井淳平(大阪弁護士会・67期)   賞金5万円

優秀賞     松本浩幸(福岡県弁護士会・66期)賞金5万円

 

 第14回季刊刑事弁護新人賞は、全国各地から12件の応募がありました。本年度は無罪を獲得した弁護活動報告が5件もありました。新人弁護士による極めて質の高い弁護活動が全国各地で展開されていることが感じられました。

 2016年11月13日に現代人文社において研究者および実務家8名からなる選考委員会を開催しました。甲乙つけがたい報告が多く、議論は難航を極めましたが、厳正なる選考の結果、最優秀賞1名、優秀賞2名を選考しました。

 最優秀賞の伊藤建さんは、初めての受任事件でありながら、現場に何度も足を運び自分の目で検察官請求証拠の矛盾を見つけ、さらには信号機のシステムという専門的領域についてつぶさに資料を検討し、それを法廷での尋問に活かし、無罪判決を獲得しました。無罪判決の裏には必ずこのような地道な弁護活動があるものです。まさに無罪を主張する事件の“王道”を歩み、初めての受任事件で無罪判決を獲得したという点が非常に高く評価されました。

 優秀賞の白井淳平さんの事案は、無罪主張の控訴審弁護事件でした。道交法違反の事案で、第一審において実刑判決が出た事案でしたが、何度も現場に足を運び、23条照会を駆使して証拠を収集し、さらには再現実験を行うなどして第一審の有罪判決とは異なるセオリーを組み立てました。このような弁護活動は第一審の弁護活動とも共通するところがありますが、控訴審は事後審であり、立証制限もある等、非常に難易度が高いものです。その中で、原判決とは異なるセオリーを裁判所が認定して原判決を破棄したのは、まさに弁護活動の賜物であったと言えるでしょう。

 同じく優秀賞の松本浩幸さんの事案は、10歳の少女に対する強制わいせつの否認事件という極めて難しい事件でした。“10歳の少女が嘘をつくはずがない”、“なぜ10歳の少女が嘘をつくのか”という誰しもが感じる高い壁に対して、明確なケースセオリーを組み立てて見事に無罪判決を獲得しました。このような事件ではとりわけケースセオリーを確立することが重要ですが、その重要性をしっかりと認識したうえで、説得力のあるケースセオリーを確立して法廷弁護活動を行った点が評価されました。

 今回受賞した3作品はいずれも無罪主張の事件で無罪判決を獲得した事件でした。それ以外にも、工夫を凝らした情状弁護活動を実践したケースや、効果的な捜査弁護活動を行って成果を上げたケースなども複数報告されました。その中で、今回受賞した3件は成果もすばらしく、また弁護活動と結果が結びついていた点で受賞に至りました。

 来年度も多くの若手弁護士のすばらしい弁護活動が報告されることを期待しています。

 

* 選考委員は、斎藤司(龍谷大学教授)、笹倉香奈(甲南大学教授)、出口聡一郎(弁護士・佐賀県弁護士会)、金杉美和(弁護士・京都弁護士会)、髙山巌(弁護士・大阪弁護士会)、趙誠峰(弁護士・第二東京弁護士会)、山本衛(弁護士・東京弁護士会)、北井大輔(本誌編集長)。


受賞レポートは、加筆修正をしていただいたうえで、『季刊刑事弁護89号』('17年1月発売)に掲載しております。


◎次回の応募要項は →こちら     歴代の受賞者は→こちら


新人賞の沿革
 伯母治之・児玉晃一両弁護士が、1997年4月、詐欺被疑事件において接見妨害を行った検察官と違法な接見指定を看過して準抗告を棄却した裁判官の責任を追及すべく国家賠償訴訟を、東京地方裁判所に提起しました。
 この訴訟で、2000年12月25日、東京地方裁判所は、伯母弁護士に慰謝料として10万円の支払いを命じましたが、児玉弁護士の請求を棄却しました。続く控訴審では2002年3月27日、伯母弁護士に慰謝料を増額し25万円の支払いを命じましたが、児玉弁護士の請求は棄却されました。これに対して、両弁護士は、伯母弁護士の慰謝料が増額され、児玉弁護士の請求に関しては棄却されたものの内容は良くなったことなど諸般の事情を考慮して、上告せず、判決が確定することになりました。
 その後、弁護団と両弁護士は、賠償金の25万円と全国の弁護士からのカンパの残余金を、全国の新人刑事弁護人の励みにして欲しいという願いから、新人賞の賞金として現代人文社に託しました。これを基金にして、2003年に季刊刑事弁護新人賞が創設されました。
 その後も季刊刑事弁護執筆者を中心とする多くの皆さまからご寄付がよせられ、年に1度、賞を贈呈しています。 

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